富士登山の準備において 体力づくりは必須といえるでしょう。
なぜなら、便利な登山グッズを買いそろえたとしても 登頂を達成するだけの体力がなければ、 途中リタイアになりかねません。
それだけならまだしも
最悪の場合、
遭難という事態を招いてしまう
のです。
それでも、夏休み中の登山道は行列ができ、
前後の間隔がなくなり、しばしば立ち止まら
なくてはならないこともあるほど人気の富士登山。
あなたも一度は挑戦してみたいと
お考えではありませんか?
そこで、これから富士登山における体力づくりと
その必要性について、過去の遭難事例などをもとに
お話したいと思います。
富士登山における「疲労遭難」
静岡県警察の地域部地域課では
Twitterのアカウントで富士登山の
情報発信を行っています。
「#富士山」のシリーズその49では
「遭難多発!約9割が下山中に遭難 約6割が疲労や発病」
と発表し、注意を呼び掛けています。
富士登山はそれほど過酷であり、
軽い気持ちで登山を決めると
痛い目をみることにもなりかねません。
富士山の年間遭難者数(静岡県側と山梨県側の両方)は、
平成28年から令和2年の5年平均で72人
(警察庁データ)となっています。
令和4年は開山日から1か月弱(8月8日時点)で
23人の遭難者が報告されています。
静岡県警地域課によると、
23人の遭難者のうち
疲労が原因となっている方が10人と
全体の43%を占めているのです。
疲労による遭難者は過去数年の平均で
15〜16%となっており、
明らかに多くなっていることがわかります。
一部遭難例を挙げると、
下山中に疲れて歩けなくなった78歳の女性を 山岳遭難救助隊員が発見し背負って下山しました。
2泊3日の予定で、 2日目に登頂、3日目に下山を開始しましたが、 疲労による足のもつれから動けなくなってしまい 山岳遭難救助隊の肩を借りて下山しました。
疲労により登頂をあきらめ下山中だった40代男性が、 両ひざの痛みで歩けなくなり、消防に通報。 山岳遭難救助隊が山小屋に資材を運ぶブルドーザーで 救出しました。
また、 救助要請は中高年ばかりではありません。 20代の事例では、
- 山小屋宿泊中に体調不良を訴え、発熱した27歳男性。 母親が消防に通報し、救助隊と下山。 富士宮口5合目で消防の救急隊員に引き継がれました。
このような事態を招く原因には、 コロナ禍でのリモートワークによる 体力・運動不足が挙げられます。
もうひとつは、 日帰りで山頂に挑む、 いわゆる“弾丸登山”が 考えられます。
富士登山は通常、高山病や疲労蓄積を 避けるため山小屋に1泊し休養を とることが推奨されています。
にもかかわらず、 疲れが十分に取れないまま登山し、 体力を消耗して動けなくなってしまう といったケースです。
静岡県警地域課は
「山小屋では疲労回復のため1泊し、 十分体を休めるようにしてください。 山小屋での休憩を取らない“弾丸登山”は 危険な行為なのでやめてください。」
と注意喚起しています。
また、疲労による通報や救助要請 に関しては、
「体力不足の方が目立ちます。 事前に十分なトレーニングを行ったうえで 登っていただきたい。」
「日ごろからのランニングなどに加え、 富士登山の前に低山に登っておくことが必要です。」
という話をされています。
富士登山における体力づくり
ウォーキング
普段から体を動かすことが少な
運動不足を感じている方は、
まずウォーキングから始めましょう。
富士山を登頂する体力づくりに加え、
登山ができる体づくりも意識しましょう。
登山予定から1か月程前には、
トレーニングを始めておきたいものです。
そこまで長距離でなくとも構わないので、
登山に適したペースを崩さないことを
心掛けましょう。
歩幅については小股が推奨されます。
小股で歩くことによって、
大腿筋・大殿筋の負担が少なくすみ
疲れにくいのです。
また、小股歩行は不安定な山道でもバランスが
取りやすいといった利点もあります。
自分の足一個半くらいが目安となります。
練習登山
富士登山を予定したのはいいものの
当日まで日にちがない場合は、
優先的に練習登山をするようにしましょう。
トレーニングを設けることも大切ですが、
ただトレーニングするだけでは身につかない
経験値が練習登山では身につきます。
というのも、登山に必要な足腰の筋力は登山を
して鍛えるのが一番効果的だからです。
険しい山や高山でなくとも
低山で構いませんので、
できるところから努力しましょう。
富士登山を侮るなかれ
世界遺産ということもあり、少ない年でも年間20万人、
多い年では年間30万人以上の登山者が訪れている富士山。
登頂者も多く有名なだけに「一度は登ってみたい」
と観光気分で登山を決意したものの、
体力トレーニングを怠ると大変な事態を招くことが
おわかりいただけたでしょうか?
静岡県警地域課の担当者の方も
「楽しく安全に登ってこそ富士山の良さ、
素晴らしさを実感できるはずです」
と話されています。
登頂の達成感や山頂からの絶景は
何ものにもかえがたいものです。
そんな喜びや感動を味わっていただくためにも
事前の準備や体力づくりを怠らず、
一生の思い出を作ってください。