「尻尾」という漢字を見て、
「“しっぽ”と読むのは知っているけれど、どうして“しりお”ではないの?」
と不思議に思ったことはありませんか。
「尻」は「しり」、「尾」は「お」と読めるため、そのまま読めば「しりお」になりそうですよね。
実は、「しっぽ」という言葉は、古い形とされる「しりお」や「しりほ」が、長い年月のなかで変化したものと考えられています。
この記事では、次の内容をわかりやすくご紹介します。
- 「尻尾」の正しい読み方
- なぜ「しりお」と読まないのか
- 「しりお説」と「しりほ説」の違い
- 「尾」に「ぽ」という読み方があるのか
- 「しっぽ」と「尾」の使い分け
- 「尻尾」を使った慣用句
難しい言葉はできるだけ使わずに説明しますので、気軽に読み進めてくださいね。
私はしりっぽと読んじゃった過去があります。笑

「尻尾」の読み方は「しっぽ」
「尻尾」の一般的な読み方は、しっぽです。
現代の日常会話では、「尻尾」を「しりお」と読むことはほとんどありません。
まずは、読み方を簡単に整理してみましょう。
| 表記 | 読み方 | 使われ方 |
|---|---|---|
| 尻尾 | しっぽ | 現代の一般的な読み方 |
| 尾 | お | 漢字一字で使う場合の読み方 |
| しりお | しりお | 語源を説明するときに登場する古い形 |
「しりお」は、現在の読み方ではなく、「しっぽ」という言葉の成り立ちを説明するときに出てくる言葉です。
そのため、普段の会話や文章では「尻尾=しっぽ」と覚えておけば大丈夫です。
なぜ「尻尾」を「しっぽ」と読むの?
「尻尾」を「しっぽ」と読むのは、昔の言葉が、長い年月のなかで発音しやすい形に変わったためと考えられています。
言葉の音や発音は、時代とともに少しずつ変わることがあります。
「しっぽ」の場合も、もともとの形とされる言葉が変化し、現在の「しっぽ」という発音が定着したと考えられているのです。

ただし、「しっぽ」のもとの言葉については、主に次の2つの説があります。
- 「しりお」が変化したという説
- 「しりほ」が変化したという説
それぞれの説を、順番に見ていきましょう。
「しっぽ」の語源には2つの説がある
「しっぽ」の語源については、すべての辞典や資料で同じ説明がされているわけではありません。
よく知られているのは、次の2つの説です。
| 語源の説 | もとの形 | 考え方 |
|---|---|---|
| しりお説 | しり+お | 「尻にある尾」という意味 |
| しりほ説 | しり+ほ | 「尻から伸びる穂のような毛」という意味 |
どちらも、「しり」の後ろに続く音が変化して「しっぽ」になったと考える点は共通しています。

「しりお」が「しっぽ」になったという説
一つ目は、「しりお」が変化して「しっぽ」になったという説です。
「しりお」は、次の2つの言葉からできています。
- しり:体の後ろ側
- お:動物の尾
つまり、「しりお」は「尻にある尾」という意味になります。
音の変化を簡単に表すと、次のようになります。
しりお
↓
長い年月のなかで音が変化
↓
しっぽ
広辞苑やコトバンクなどでは、この「しりお」が音変化したという説明が紹介されています。
現在、「しっぽ」の語源として比較的よく知られている説です。
「しりほ」が「しっぽ」になったという説
もう一つは、「しりほ」が変化して「しっぽ」になったという説です。
この説では、「しりほ」を「尻穂」と考えます。
「穂」は、稲やススキなどの先にある、細長く伸びた部分のことです。
動物の尻尾を、尻から伸びる穂のようなものに見立てて、「しりほ」と呼んだのではないかと考えられています。
しりほ
↓
長い年月のなかで音が変化
↓
しっぽ
『日本国語大辞典』や語源を扱った資料では、この「しりほ」に関係する説が紹介されることがあります。
「しりお説」と「しりほ説」はどちらが正しいの?
「しりお説」と「しりほ説」のどちらか一方だけが、完全に正しいと決まっているわけではありません。
古い言葉の語源は、昔の文献や用例などを手がかりにして考えられます。
しかし、言葉が生まれた瞬間の記録が必ず残っているわけではないため、複数の説が存在することも珍しくありません。
そのため、「しっぽには“しりお説”と“しりほ説”がある」と理解しておくのがよいでしょう。
なぜ「しりお」と読まないの?
「尻」と「尾」を一字ずつ読むと、「しりお」になりそうですよね。
それでも現代では「しりお」と読まないのは、すでに「しっぽ」という読み方が一般的な言葉として定着しているからです。
「しりお」は、現在の読み方というよりも、「しっぽ」という言葉の古い形や語源を説明する際に登場します。
つまり、次のように分けて考えるとわかりやすくなります。
- 現代の一般的な読み方:しっぽ
- 言葉の成り立ちを説明する古い形:しりお、または、しりほ
漢字を一字ずつ読める場合でも、その読み方が現在使われているとは限りません。
「尻尾」も、そのような言葉の一つです。
「尾」という漢字を「ぽ」と読むわけではない
「尻尾」を「しっぽ」と読むなら、「尾」には「ぽ」という読み方があるのでしょうか。
結論からいうと、「尾」という漢字に「ぽ」という一般的な読み方はありません。
「尾」の主な読み方には、次のようなものがあります。
| 読み方 | 使用例 |
|---|---|
| お | 動物の尾 |
| び | 尾行、尾部 |
| おわり | 一部の名前や古い用法など |
では、「しっぽ」の「ぽ」はどこから出てきたのでしょうか。
語源の説によって、次のように説明されます。
- しりお説:「お」の音が変化して「ぽ」になった
- しりほ説:「ほ」の音が変化して「ぽ」になった
そのため、「尾」という漢字を単独で「ぽ」と読むわけではありません。
「尻尾」という言葉全体で「しっぽ」と読む、と考えるのがわかりやすいでしょう。

「尻尾」は熟字訓なの?
「尻尾」は、熟字訓として紹介されることがあります。
熟字訓とは、漢字を一字ずつ読むのではなく、複数の漢字をひとまとまりにして、全体に読み方を当てるものです。
代表的な熟字訓には、次のような言葉があります。
| 漢字 | 読み方 |
|---|---|
| 今日 | きょう |
| 大人 | おとな |
| 土産 | みやげ |
| 吹雪 | ふぶき |
「尻尾」も、「尻」を「しっ」、「尾」を「ぽ」と分けて読むのではなく、「尻尾」という二字全体を「しっぽ」と読んでいます。
そのため、熟字訓として扱われることがあるのです。
熟字訓と語源は別の説明
ここで気をつけたいのは、熟字訓と語源は別の話だということです。
- 熟字訓:漢字をどのように読むかという分類
- 語源:その言葉がどのように生まれたかという説明
「尻尾を“しっぽ”と読むので熟字訓である」という説明と、「“しりお”や“しりほ”が変化した」という説明は、矛盾しているわけではありません。
それぞれ違う角度から、「尻尾」という言葉を説明しているのです。
「しっぽ」と「尾」はどう違うの?
「しっぽ」と「尾」は、基本的には同じ部分を指します。
ただし、使われる場面や言葉の印象には少し違いがあります。
「しっぽ」は日常会話で使いやすい言葉
「しっぽ」は、やわらかく親しみやすい印象があります。
たとえば、次のような会話では「しっぽ」が自然です。
- 犬がうれしそうにしっぽを振っている
- 猫のしっぽがふわふわしている
- うさぎのしっぽは丸くてかわいい
子ども向けの文章や、日常的な会話でもよく使われます。
「尾」は文章や専門的な説明で使われやすい言葉
「尾」は、「しっぽ」よりも少し硬く、文章的な印象があります。
- 動物の尾の長さを調べる
- 鳥の尾羽
- 魚の尾びれ
- 尾を引く
図鑑や生物に関する説明、慣用表現などでは「尾」がよく使われます。
使い分けを簡単にまとめると、次のようになります。
| 言葉 | 使われやすい場面 |
|---|---|
| しっぽ | 日常会話、子ども向けの文章 |
| 尻尾 | 一般的な文章、慣用句 |
| 尾 | 図鑑、解説文、専門的な表現 |
意味はほぼ同じなので、文章の雰囲気に合わせて使い分けるとよいでしょう。
「尻尾」の意味
「尻尾」には、動物の体の一部を表す意味と、そこから広がった比喩的な意味があります。
動物の体の後ろにある尾
もっとも基本的な意味は、動物の体の後ろから伸びている尾のことです。
犬や猫、馬、キツネなど、多くの動物に使われます。
「犬が尻尾を振る」「猫の長い尻尾」のように表現します。
物事の最後や後ろの部分
動物の尻尾が体の後ろにあることから、「尻尾」は物事の最後の部分や、後ろに続く部分を表すこともあります。
また、秘密や隠し事の一部が見えてしまう様子を、動物の尻尾にたとえた慣用句もあります。
「尻尾」を使った慣用句
「尻尾」は、日常会話で使われる慣用句にもよく登場します。
代表的な表現を見てみましょう。

尻尾をつかむ
「尻尾をつかむ」とは、悪事や秘密を明らかにする証拠を押さえることです。
例文
調査を続け、ようやく相手の尻尾をつかんだ。
逃げようとする動物の尻尾をつかむと、動きを止められる様子から生まれた表現と考えると、意味をイメージしやすいでしょう。
尻尾を出す
「尻尾を出す」とは、隠していた正体や悪事が、うっかり表に出てしまうことです。
例文
最後までごまかしていたが、ついに尻尾を出した。
姿を隠していた動物の尻尾だけが見えてしまう様子を思い浮かべると、意味がわかりやすくなります。
尻尾を巻く
「尻尾を巻く」とは、恐れて逃げたり、負けを認めて引き下がったりすることです。
例文
相手の勢いに驚き、尻尾を巻いて逃げ出した。
犬などが怖がったときに、尻尾を股の間へ巻き込む様子から生まれた表現です。
尻尾を振る
「尻尾を振る」は、本来、犬などが喜びや親しみを表す動作を指します。
人に対して使う場合は、相手に気に入られようとして、愛想よく振る舞うという意味になることがあります。
例文
上司に尻尾を振るような態度は取りたくない。
人に使うと少し批判的な意味になるため、使用する場面には気をつけましょう。
トカゲの尻尾切り
「トカゲの尻尾切り」とは、組織の中心にいる人を守るために、立場の弱い人や一部の人だけに責任を負わせることです。
トカゲが身を守るために尻尾を切り離して逃げる様子から生まれました。
例文
担当者だけを処分して終わらせるのは、トカゲの尻尾切りではないだろうか。
ニュースなどでも使われる表現です。
「尻尾」に関するよくある間違い
「尻尾」の読み方や語源について、間違いやすいポイントをまとめました。
| 間違いやすい考え方 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 「尻尾」は「しりお」と読む | 現代では一般に「しっぽ」と読む |
| 「尾」には「ぽ」という読み方がある | 「尾」を単独で「ぽ」とは読まない |
| 語源は「しりお説」だけである | 「しりほ説」も紹介されている |
| 熟字訓と語源は同じ説明である | 読み方の分類と、言葉の成り立ちは別の話 |
| 「しっぽ」と「尾」はまったく違う意味 | 基本的には同じ部分を指す |
「漢字の読み方」と「言葉の語源」を分けて考えると、理解しやすくなります。
「尻尾」に関するよくある質問
「尻尾」は「しりお」と読んでもよいですか?
現代の一般的な読み方は「しっぽ」です。
「しりお」は、「しっぽ」の語源や古い形を説明するときに登場します。
そのため、普段の会話や文章では「しっぽ」と読むのが自然です。
「尾」は単独で「ぽ」と読みますか?
「尾」を単独で「ぽ」と読むことはありません。
「しっぽ」の「ぽ」は、昔の言葉が音変化した結果として生まれたものと考えられています。
「しっぽ」は漢字とひらがなのどちらで書きますか?
「尻尾」と「しっぽ」のどちらも使えます。
一般的な文章では「尻尾」、やわらかい雰囲気の文章や子ども向けの文章では「しっぽ」がよく使われます。
記事全体の雰囲気に合わせて選ぶとよいでしょう。
「尻尾」は熟字訓ですか?
「尻尾」という漢字全体に「しっぽ」という読み方を当てているため、熟字訓として扱われることがあります。
ただし、「しりお」や「しりほ」が変化したという語源の説明とは、別の観点からの分類です。
「しりお説」と「しりほ説」はどちらが有力ですか?
辞典や資料によって、紹介されている説が異なります。
広辞苑やコトバンクなどでは「しりお」の音変化として説明される一方、「しりほ」に関係する説を紹介する資料もあります。
どちらか一つだけに決めつけず、複数の説があると理解しておくのがよいでしょう。
まとめ
「尻尾」の読み方や語源について解説しました。
最後に、記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 「尻尾」の一般的な読み方は「しっぽ」
- 現代では「しりお」と読むことはほとんどない
- 語源には「しりお説」と「しりほ説」がある
- 「尾」という漢字に「ぽ」という読み方があるわけではない
- 「尻尾」は熟字訓として扱われることがある
- 熟字訓は読み方の分類であり、語源とは別の説明
- 「しっぽ」は日常会話、「尾」は文章や専門的な説明で使われやすい
普段何気なく使っている「しっぽ」という言葉にも、昔の日本語や音の変化が関係しています。
「尻」と「尾」で、なぜ「しっぽ」と読むのか不思議に感じますが、言葉の歴史を知ると、少し納得できるのではないでしょうか。
身近な言葉の成り立ちに注目してみると、日本語や漢字を今まで以上に楽しく感じられそうですね。